【シリーズ:北京の志士 見聞録】
豊田社長の米国議会公聴会対応に学ぶ
『北京の志士 見聞録』の原田です。
2回目は「豊田社長の米国議会公聴会対応に学ぶ」と題してお届けします。
(第1回「創造と変革の志士への道のり」はこちら)
グロービスの多くのクラスに採用されている「ケースメソッド」という
学習方法では、過去に様々な人たちが直面した問題について
「自分ならどうするか」を考える機会を与えられます。
その癖でしょうか(笑)、自分が関心がある世の中の出来事について
「自分ならどうするか」を考えることが多く、今回は
「トヨタの社長として米国議会に公聴会に呼ばれたらどうするか」を
考えてみました。
豊田社長は公聴会に呼ばれることが決まってから実際に出席するまでに
約2週間しかありませんでしたが、幸い僕にはもっと時間がありました(笑)。
このブログの読者の方はMBAに関心をお持ちでしょうから、
良い機会ですので、少し時間を取って自分がトヨタの社長になった気持ちで
「トヨタの社長として米国議会に公聴会に呼ばれたら自分ならどうするか」
を皆さんもちょっと考えてみましょう。
皆さんなら、どのような対応をされたでしょう?
僕なら、トヨタに周りから指摘されているような品質問題がないという前提で、
基本的には以下のように対応します。
-事故で亡くなった方への哀悼の意を表する
自らの誠実さを表明するとともに、参加者全員が同じ事を考えることで
相互の対立感を弱める。
-「対応が遅い」などの二次的に指摘されている問題は素直に認め、
相手の言い分を聞いている立場を明確にする。
-「急加速する」などの本質的問題については、相手の言い分を聞きつつも、
客観的な証拠を提示するなどして、自社の見解を明らかにする。
一方で、本当にトヨタに問題があるなら、以下のように対応します。
-冒頭にまず問題を認めてしまう
-問題への対応方法を概略説明する
-亡くなった方への哀悼の意を表し、再発防止を誓う
実際に使われた公聴会の原稿は、トヨタのホームページにあります。
またロイターに日本語訳例があります。
原稿には一部しか記載がありませんでしたが、実際の公聴会で豊田社長は、
「すべてのトヨタ車には私の名前が入っています。車が傷つくということは
私自身の体が傷つくことに等しいのです」のような趣旨の発言されており、
創業者一族にしか言えない一言だなと、僕は妙に感心しました。
また、この公聴会での証言は、日本の国会の証人喚問よりも
構造的に難しい面がありました。
この難しさはすなわち異文化コミュニケーションの難しさだと思います。
具体的に何が難しいかと自分なりに考えてみると、
-相手が先入観を持っているので説得が難しい
-文化が違うので、何に共感してもらえるかが分からない
-自分の発言如何で会社が窮地に陥るかもしれない
-何を質問されるかが分からない
-通訳を介したコミュニケーションなら、臨機応変な対応が難しい
-通訳を使わないないなら、自分の言語能力の制約で成果が左右される
などを思いつきました。
(MECEではないですがご容赦を。)
卑近な例ですが、僕が毎日職場で直面している異文化コミュニケーションの
悩みを挙げてみると、
-中国人技術者がどのような前提で物事を考えているかがはじめは
分からないので、まずはお互いの前提を確認することから
コミュニケーションが始まる。
-会社の通訳は、日本語は熱心に勉強してきていますが、技術のことは
さっぱり分からないので、ポイントを押さえたコミュニケーションができない
-タイミングを逸すると中国人技術者が言いたいことばかりしゃべりはじめて、
中断できない。
-技術者同士なら片言の中国語でも通じる部分はあるが、細かい違いは
お互いにうまく説明ができなくて、共通認識が持てない
といった状況でした。当然ですが、最近は相互理解が進んできていますので、
分かり合える部分が増えてきています。
このような障害を乗り越えて分かり合えるようになってきた中国人技術者とは、
もともと同じ前提を共有しているはずの日本人技術者よりも密な関係が
構築できている感じがしますので、異文化コミュニケーションとは
不思議なものですね。
この異文化コミュニケーションの難しさについては、豊田社長は留学経験を
お持ちですので、経験済みでしょう。経験を通して対応方法も体得されているので、
この公聴会も無難に対応可能だったのでしょう。ここで「体得」と書いたのは、
このような状況への対応能力は、自転車の乗り方を覚えるように、行動してみて
初めて身に付くと僕は感じているからです。
グロービス東京校ではIMBAのコースが開設され、多様な学生の皆さんが
集まっていると聞いています。異文化コミュニケーションの良い機会に
なると思いますので、積極的な交流を持たれてはいかがでしょうか?
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